今回はハイレゾに対応していないスマホでも高音質なハイレゾで音楽が聴けるUSB DAC iBasso DC02 を皆さんに紹介します。
最近はスマホで音楽を聴く事が当たり前という状況ですので、それにともなってスマホに組み込まれているDACの性能も著しく向上し、一部の高性能なスマホであればハイエンドのハイレゾ音源の再生も可能となってきています。
しかしながら、中にはハイレゾに対応したスマホでも、どこまでのハイレゾに対応しているのか不明であったり、全くハイレゾに対応していないスマホもまだまだ存在しているというのが現状です。
そこで今回は、ロースペックなハイレゾ対応スマホや、ハイレゾに対応していないスマホでも、デジタルオーディオプレーヤーとほぼ同等のハイレゾ再生を可能にしたUSB DAC iBasso DC02 の性能を徹底的に検証していこうと思います。
さらにUSB DAC iBasso DC02 を使用してスマホでハイレゾ音源を再生する上で必要となるソニー ミュージックセンターの使い方も合わせて解説させて頂きます。
ハイレゾとは?
まず最初にハイレゾについて簡単に説明します。
ハイレゾの二つの定義
実は厄介な事にハイレゾには二つの定義が存在しています。
基本的にはJEITA(電子技術産業協会)の定義したハイレゾが標準となってまして、その定義というのは、サンプリング周波数44.1kHz以上で量子化ビット数16ビットを超えているか、または16ビット以上で48kHzを超えているものとなっています。
と言われても良く分かりませんよね?
という事で下の表をご覧下さい。
JEITAと日本オーディオ協会のハイレゾ領域の違い
32bit | 日本オーディオ協会の ハイレゾ (ハイレゾロゴマーク使用可) |
||||||
24bit | JEITAの ハイレゾ |
||||||
20bit | |||||||
16bit | CDスペック | ||||||
1bit | DSD | ||||||
44.1kHz | 48kHz | 88.2kHz | 96kHz | 192kHz | 384kHz | 2.8MHz以上 |
(青色がJEITAのハイレゾで、黄色が日本オーディオ協会のハイレゾです。DSDに関しては後ほど詳しく解説します)
表を見てもらえば良く分かるかと思いますが、JEITAのハイレゾの定義は、CDスペックを超えるものであれば何でもハイレゾって言ってもいいですよ、という事になります。
(メーカー側に都合の良いゆるい定義となってます)
しかしこれではCDスペックと大差無いものでもハイレゾになってしまいますので、性能の低いハイレゾ製品で試聴した人は、
「ハイレゾって言ってもCDとたいして変わんないじゃん」
という事になってしまいます。
そこで立ち上がったのが日本オーディオ協会で、CDの音質をはるかに上回る独自のハイレゾを定義しました。
日本オーディオ協会が定めたハイレゾの定義を簡単にまとめると以下のようになります。
- アンプ、スピーカー、ヘッドホンの高域再生性能が40kHz以上である事。
- 96kHz/24bitのFLAC or WAVファイル の録音が可能であること。
- 96kHz/24bitのFLAC/WAVファイルの再生に対応可能であること。
- 96kHz/24bitでデジタル・アナログ変換が可能であること。
つまり、記録も再生もサンプリング周波数96kHz以上で、なおかつ量子化ビット数24bit以上であり、音響機器も40kHz以上の高域再生能力があるものをハイレゾと認定するというかなり厳しい条件となっています。
それゆえこの厳しい条件をクリアーしている製品にはハイレゾロゴマークの使用が許可されますので、本当に高性能なハイレゾ対応製品を選ぶ上での大きな目印になるという訳です。
(このハイレゾロゴマークが目印です)
ハイレゾといってもピンからキリまでありますので、音源であれデバイスであれ、ハイレゾ関連商品を購入する場合は、JEITA版のハイレゾなのか日本オーディオ協会のハイレゾなのかを見極める事が重要なポイントになってくるという事です。
PCMとは?
PCM(パルス コード モジュレーション)というのは、アナログ音源をデジタルに変換する最も標準的な方式で、CDやDVD、音楽ファイル等の記録方式として採用されています。
原理は非常に簡単で、ある一定の周期(サンプリング周波数)でアナログ音源の電圧を計測し、数値化する事によってデジタルデータに変換しています。
CDではサンプリング周波数44.1kHz、量子化ビット数16ビットとなっています。
それに対して日本オーディオ協会の定義したハイレゾ音源は、最低ラインが 96kHz/24ビットのFLACかWAVファイルですので、CDを大幅に上回る音質である事が確実に保証されているという訳です。
それゆえ24ビットは、16ビットとは比較にならないほど超精密な計測結果が得られますので、高いサンプリング周波数と組み合わせれば、より原音に近い波形の再現が可能となります。
DSDとは?
DSD(ダイレクト ストリーム デジタル)というのはハイレゾの定義とは全く異なるもので、スーパーオーディオCD(SACD)で使用される規格ではありますが、日本オーディオ協会ではDSDもハイレゾとして認定しています。
DSDの原理は、音の振幅の大きさをパルスの幅に変換するパルス密度変調というややこしい方式で少々分かりづらいかと思いますが、ラジオで例えると、PCMはAMで、DSDはFMに相当すると言った方が分かり易いかと思います。
DSDはさらに厄介な事に表記の仕方が二通りありますので、下の表にまとめてみました。
倍数表記 | DSD64x | DSD128x | DSD256x |
周波数表記 | DSD 2.8MHz | DSD 5.6MHz | DSD 11.2MHZ |
ファイル拡張子 | .dsf .dff |
倍数表記というのは、基準となるCDのサンプリング周波数44.1kHzの何倍になるかで表記されています。
つまり、DSD64xであれば、サンプリング周波数は 44.1kHz x 64 ≒ 2.8MHz という事になります。
PCMと比較すると、DSDはビット数は1ビットではありますが、サンプリング周波数が恐ろしく高いというのが大きな特徴となっています。
ファイル拡張子は .dsf と .dff で、一般的に購入できるのは .dsfファイルになります。
音楽ダウンロードサイトでは、DSF 2.8MHz等と表記されて購入可能となっていますが、DSF 11.2MHzともなると音源の数は非常に少なく、この人一体だれやねん? というような物しかないというのが現状です。
USB DAC iBasso-DC02とは?
このUSB DAC iBasso-DC02は、Android5.1以降のUSB Type-C対応のスマートフォンに接続すれば、ハイレゾに対応していないスマホ(タブレット)でもハイレゾ音源の再生が可能となります。
(付属のコンバーターを使用すればパソコンにも使用できます)
ただし、使用しているスマホがOTG(On The Go)に対応している必要がありますので、自分のスマホがOTGに対応しているかどうか確認する必要があります。
では、なぜこのUSB DAC iBasso-DC02でハイレゾ再生が可能となるのか簡単に説明します。
まずDACというのは、Digital to Analog Converter(DAコンバーター)の略で、デジタルデータをスピーカー等で再生できるようにアナログ電圧信号に変換する回路の事を意味しています。
その逆がADC: Analog to digital converter(ADコンバーター)で、マイクやセンサー等のアナログ電圧信号をデジタルデータに変換する役割を担っています。
スマホの内部にはこのADCとDACが組み込まれているおかげで、皆さんがスマホで通話をしたり、音楽を聴いたりする事ができるという訳です。
(一般的な3.5mm ステレオミニジャックです)
しかし、スマホに組み込まれているDACがハイレゾに対応していなければ、当然ハイレゾ音源の高音質を再現する事は物理的に不可能です。
(毎日優しく声をかけたり、念力やハンドパワーを送ったりしても無理なものは無理です)
そこで、スマホの内部DACを通す事なくデジタルデータを直接USBに出力して、ハイレゾに対応した高性能な外部DACでアナログ信号に変換してやれば、ハイレゾに対応していないスマホであっても高音質なハイレゾ音源の再現が可能になるという訳です。
このiBasso-DC02は、PCMで384kHz/32bit、DSDであれば256x(11.2MHZ)のネイティブ再生までに対応した超ハイスペックなUSB DACですので、現状ダウンロード可能なハイレゾ音源のほとんどに対応可能となっています。
さらにハイレゾに対応したスマホでも外部DACを使用すれば、スマホ内部の電磁波ノイズの影響が最小限となり、クリアーな音質が得られるというメリットもあります。
このスマホでのハイレゾ再生において理想的なiBasso-DC02の使用方法をこれから具体的に解説していきます。
ソニー ミュージックセンターの基本的な使い方!
まずUSB DACでハイレゾを再生するために必須の音楽再生アプリ、ソニー ミュージックセンターの基本的な使い方から解説していきます。
ソニー ミュージックセンターの設定方法
下記リンクにアクセスしてソニー ミュージックセンターをスマホにインストールして開きます。
上の設定をタップします。
ミュージックセンターの設定をタップします。
動画ファイルの表示設定にチェックを入れると動画ファイルまで表示されてしまいますのでチェックを外します。
このモバイル機器をタップします。
設定をタップします。
モバイル機器のサウンド再生設定の利用にチェックを入れるとミュージックセンターの音質調整機能が使えなくなりますので、このチェックを外してからサウンド・再生をタップします。
ソースダイレクトのチェック外してイコライザーをタップします。
オフの部分をタップします。
お好みのプリセットモードを選択します。
自分で調整したい方は、ユーザー設定を選択します。
調整したパラメーターはユーザー設定に保存されます。
次にサラウンドをタップします。
お好みのサラウンドモードを選択します。
ハイレゾ本来の音質で聴きたい場合はソースダイレクトにチェックを入れます。
ミュージックセンターの再生方法
マイライブラリーをタップします。
アルバムを選択します。
上側の曲名をタップすると曲が再生され、下側にサムネイルが表示されます。
下側のサムネイル部分をタップするとプレーヤーが拡大表示されます。
(このハイレゾ音源は96kHz/24bitです)
USB DACの接続方法と使い方!
まずミュージックセンターを起動して iBasso-DC02をスマホに接続します。
するとMusic CenterにIBASSO-DC-Seriesへのアクセスを許可しますか?と出ますので、OKをタップします。
このモバイル機器をタップします。
設定をタップします。
サウンド再生をタップします。
USB DACを接続すると「モバイル機器のサウンド・再生設定の利用」は使用できなくなります。
DSEE HXにチェックを入れます。
これにチェックを入れると低音質な音源をアップスケーリングして高音質化する事が可能となります。
(USB DAC 接続時はミュージックセンターの音質調整機能は無効となります)
次に出力設定をタップします。
DSDのUSB出力をタップします。
DSDネイティブを選択します。
ホーム画面に戻りマイライブラリーを選択します。
後は基本的な使い方と同じで聞きたい曲を選んでタップすれば曲が再生されます。
「PASSION」(FLAC:192kHz/24bit)
こちらはDSF 11.2MHzです。
こちらの「VOICES Strings ver.~featuring Ayasa」(96kHz/24bit)のハイレゾ音源は音楽ダウンロードサイト moraから無料でダウンロードできます。
音が出ない場合は、一旦開いているアプリを全て閉じてUSB DACを抜き、もう一度ミュージックセンターを起動して最初からやり直してみて下さい。
USB DAC iBasso DC02の評価
iBasso DC02 の音質
今回 iBasso-DC02の試聴には普段使用しているパイオニアのヘッドホンとエレコムのイヤホンを使用しました。
(どちらもハイレゾに対応しています)
(パイオニア SE-MS5T シルバー)
(エレコム EHP-CH1010AGD)
今回 iBasso DC02で3種類のハイレゾ音源を試聴した結果、ノイズも無く実にクリアーで、いずれも音質は非常に良好でした。
スマホでこれだけの音質で聴けるのであればもう大満足です。
ではハイレゾ対応のスマホの場合はUSB DACは必要無いのかと言うとそうでもなく、ミュージックセンターのDSEE HX機能を使用する場合にはUSB DACが必要となります。
このDSEE HX機能は、低音質な音源をアップスケーリングして高音質化してくれますので、スマホに取り込んだ低音質なCD音源にこの機能を使うと、ペラペラだった音が厚みのある感じになり、ボーカルの声は妙に生々しい感じになります。
このDSEE HX機能がCDから取り込んだ音源に効果的ですので、AQUOS sense2はハイレゾに対応はしているのですが、現状ではUSB DACを使い続けてます。
ただ今回USB DACの実験をしてみてハッキリわかった事は、ハイレゾ音源は恐ろしく音がいいという事です。
特に192kHz/24bitのFLAC音源は光かがやく高音質で、明らかにCDとは別物と言えます。
(ただ残念な事に 192kHz/24bit の音源は非常に少ないです)
という事でCDと各ハイレゾ音源の周波数分布をパソコンで解析して比較してみました。
夜カフェ(CD:44.1kHz/16bit)をパソコンにFLACで取り込んで周波数解析をした結果がこちらです。
概ね予想通り21kHzぐらいまで出ています。
サンプリングの定理からすると、CDの高域周波数は22.05kHzが限界値となります。
(厳密に言うと22.05kHz未満ですが、話がややこしくなるので限界値と表現しています。あらかじめ御了承下さい)
「はなまるぴっぴはよいこだけ」(FLAC:96kHz/24bit)の解析結果はこちらです。
高域周波数は限界値の48kHzに近い約47.9kHzまで伸びています。
「PASSION」(FLAC:192kHz/24bit)
192kHz/24bit の「PASSION」は、限界値の96kHz近くまで余裕で伸びてます。
これはすごいです。
実際このハイレゾ音源は物凄く音がいいです。
DSD 11.2MHzのファイルはパソコンで直接解析できませんでしたので、
スマホ ➡ iBasso-DC02 ➡ パソコンのライン入力
という流れで接続し、iBasso-DC02で変換されたアナログ信号をパソコンに取り込んで解析しました。
(iBasso DC02 のアナログ出力をパソコン背面のライン入力に接続してADコンバーターでデジタルに変換して取り込んでます)
「プロコフィエフ~」(DSD 11.2MHz)
高域周波数が約95.9kHzまでとなっているのは、パソコンのADコンバーターが192kHz/16bit ですので、96kHz以上の周波数を計測できないのが原因となってます。
DSDの高域周波数を計測するにはもっと高性能なADコンバーターが必要となりますので、DSD 11.2MHzの限界がここまでとは決して勘違いしないようお願いします。
しかしこの結果からはっきりしたのは、iBasso-DC02のアナログ出力は約96kHzまでしっかり出力されているという事です。
(それ以上の周波数は上記の理由により残念ながら計測不能です)
これは自分の予想をはるかに上回る性能で、この価格でこれ程の性能とは驚きです。
物凄いコスパの良さです。
以上の解析結果から判断すると、iBasso-DC02の性能を十分に発揮させるにはそれ相応のイヤホンかヘッドホンが必要となってきますので、次にイヤホンとヘッドホンの性能について見ていきます。
イヤホンとヘッドホンに必要な性能
という事で高音質なハイレゾ音源を再現する上で必要となるヘッドホンとイヤホンの高域再生性能をまとめてみました。
ハイレゾ音源 | 必要な高域再生周波数 |
FLAC 96kHZ/24bit DSD 2.8MHz |
約40kHz |
FLAC 192kHz/24bit DSD 5.6MHz |
約80kHz |
DSD 11.2MHz | 不明(恐らく100KHz以上) |
スマホで手軽にハイレゾを楽しみたい方にはこちらがおすすめです。
パイオニア SE-MS5T ブラック
再生周波数帯域:9Hz – 40kHz
エレコム EHP-CH1010AGD
再生周波数帯域:5Hz – 45kHz
iBasso-DC02の性能を十分に発揮させるには少なくとも高域再生能力80kHzぐらいのヘッドホンかイヤホンが必要になってきますので、ガチで高音質なハイレゾで音楽を聴きたいという方にはこちらのヘッドホンがおすすめです。
SONY MDR-1AM2
再生周波数帯域:3Hz – 100kHz
DSD の注意点
DSDで注意しければならない点は、ファイルのデータサイズがとんでもなく大きいという事です。
今回ダウウンロードしたDSD 11.2MHzのハイレゾ音源は一曲で1.2GBで、アルバム全曲ダウンロードすると9.2GBのサイズとなってしまいます。
(ファイルサイズ 1213.8MBは約1.2GBになります)
自分の場合はマイクロSDカードを使用しているのでこれぐらいはどうって事ないのですが、メモリー容量の少ないスマホの場合は致命的なサイズとなります。
DSDに比べればFLACのサイズはコンパクトになってはいますが、ハイレゾはそれなりにデータサイズは大きなものとなってしまいますので、メモリー容量に不安のある方はマイクロSDカードの利用をおすすめします。
おまけとして今回試聴した「はなまるぴっぴはよいこだけ」の動画がYOUTUBEにありましたので貼っておきます。
USB DAC iBasso DC02 のまとめ
世間ではハイレゾの音質に対してまだ懐疑的な人達がいる一方で、こういった高い周波数の倍音成分を含む音楽を聴くと集中力アップや、脳の活性化に効果があるなどといった根拠の無い主張をしている方達も見受けられます。
実際そのような効果があるのかどうかは自分には全く分かりませんが、ただ一つだけハッキリと言える事は、ハイレゾを聴くと気分が非常に良くなるという事です。(聴く曲にもよります)
これだけでもハイレゾを聴く価値は十分にあると思います。
ならばハイレゾ対応のスマホに機種変更するとか、デジタルオーディオプレーヤーを購入するという手もありますが、iBasso-DC02ならば、さしてコストを掛ける事なくただスマホに接続するだけでハイエンドのハイレゾ音源を聴く事が可能となりますので、このメリットを活かしてみてはいかがかと思います。
それでは本年も宜しくお願い致します。
という事でまた次回もお楽しみに!
※誠に申し訳ないのですがiBasso DC02は生産終了となってしまいました。
しかし後継機として現在はMasterHIFI品質のDACチップ「CS43131」を採用し、出力80mWにアップした新型のiBasso DC03が発売されていますのでこちらをチェックしてみて下さい。
2.5mmのバランス接続タイプのイヤホンやヘッドホンを使用している方はこちらのiBasso DC01がおすすめです。
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